- Q.
- 不動産の名義変更は必要なの?
- A.
-
ご家族が亡くなられた場合、残された相続人は様々な手続きをしなければなりません。
ここでは登記の専門家として不動産をお持ちの方が亡くなられた場合に必要となる名義変更登記(相続登記)についてご説明いたします。不動産の相続登記には「いつまでに名義変更しなければならない」という期限がありません。
このため、いつまでも亡くなった方の名前のままにしておかれる場合がありますが、これは後々、手続きが複雑になる要因でもあります。
なぜなら、長期間名義を変えずに置いておくと、相続人のうちの一人が亡くなって更に相続人が増え、不動産の処分についての意見がまとまらない可能性が出るためです。
また登記に必要な戸籍などの関係書類が保存期間経過のために廃棄されてしまい、相続人がはっきりしないことも出てきます。
もちろん、我々専門家は最大限の努力をして皆様の納得のいくよう提案をし、資料集めをいたしますが、その分手続き費用も余計にかかってしまいます。
このため、相続人が元気で意見がまとまりやすい早い時期に相続による名義変更の手続きをされることをお薦めします。また、相続する財産はご実家の不動産以外にはほとんど無い、という方も多いと思います。
この場合、ご実家に住む方がいらっしゃらないのであれば、相続による名義変更をして売却する等の処分方法を考えなければなりません。 - Q.
- 名義変更の手続きの流れと期間は?
- A.
-
① まずは相続人と不動産の調査が必要です。
相続人の調査は、お亡くなりになった方の戸籍を出生まで遡って調べます。
もしお子様がいらっしゃらない方で、ご両親もお亡くなりになっている場合はご兄弟が相続人となります。
ご兄弟を探すには更にご両親の戸籍を出生まで遡る必要があります。
この相続人調査の過程で思わぬ相続人が見つかることや、相続人が亡くなっておりそのお子様が相続人になるなどして、縁の薄い方が相続人として権利を主張してくる可能性があります。
相続人である以上、たとえその相続分がわずかであっても、その方の同意なしに処分することが出来ないのが不動産の厄介なところです。では、これらを避けるにはどうしたら良いか?残念ながら完璧な方法はありませんが、有効なのは遺言書を書いておくことです。
遺言書と"遺言書が完璧ではない理由"は、後ほどご説明いたします。さて、次に不動産の調査ですが、これは権利証や登記事項証明書、公図、名寄せ帳等から探していくことになります。
地方にご実家があるような方では、少し離れた裏山に山林を所有していることや、井戸のある土地を共有で権利を持っていらっしゃることもあります。相続人と不動産の調査は並行して進めますが、戸籍を郵送で取得することもあるため、数週間から場合によっては数カ月かかることもあります。
② 遺産分割協議
相続人と不動産がはっきりしたら、次は遺産分割協議です。
誰がその不動産を相続するのか、不動産をもらわない相続人には金銭を分けるのか、それとも不動産を売却して金銭を分割するのか。
相続人によってその不動産に対する思い入れはそれぞれです。
もう少し置いておきたいと考える方もいれば、出来るだけ早く売却して金銭で分けて欲しいと考える方もいらっしゃるでしょう。
相続人の意見がまとまったら遺産分割協議書を作成し、相続人が署名して実印で押印します。
この協議書は相続登記の際に必要となります。なお、遺言書があった場合でも、相続人全員の同意があれば遺言書と異なった財産の分け方をすることが出来ます。
③ 相続登記(名義変更)
不動産の名義変更の登記は、その不動産を管轄する法務局に提出します。
現在ではインターネットを使ったオンライン申請により、司法書士は事務所のパソコンから日本全国の不動産の登記申請をすることが可能となりました。④ 登記完了
申請に問題が無ければ、登記申請からおよそ1週間で登記が完了します。
完了後には権利証に相当する登記識別情報や登記事項証明書、戸籍等一式を相続人の方にご返却いたします。相続による名義変更のご依頼いただいてから登記が完了してご返却するまでの期間は、最短で2週間ほど、相続人の意見がまとまらない場合は家庭裁判所を利用した手続きとなるため、1年以上の期間がかかることもあります。
その間は不動産を処分することができませんので、相続人同士の人間関係が良好であることが全員の利益となることは間違いありません。 - Q.
- 相続についてどのような手続きを行ってもらえるの?
- A.
-
相続による不動産の名義変更のご依頼をいただいた場合、当事務所では上記"名義変更の手続きの流れと期間は?"の流れにあるとおり、必要な戸籍集め、不動産の調査、遺産分割協議書の作成、登記申請、登記完了後の書類一式のお渡しまでを基本として受託させていただきます。
もちろん、すでにお客様で集められた戸籍等がありましたら、無駄な費用がかからないようにそちらを利用させていただきます。
場合によっては現地を確認することにより、当事者ではわからなかった法律関係の問題について明らかになることもあります(下記【事例】参照)ので、書類による不動産調査の際にはお客様と綿密な打ち合わせをさせていただきます。この他にも空き家対策や改葬(お墓の引越し)など、当事務所が窓口となって手配することが出来るものもございますので、お気軽にご相談ください。
なお、相続手続きが完了した後に売却や建て替えなどをご希望の方は必要に応じて専門家をご紹介させていただくことも可能です。【事例】<土地の一部が他人の所有であり、すでに時効が成立していた事例>
- N県内の土地の相続の際、依頼人(相続人)からの情報で、土地の一部がかつて隣家に住んでいた親族の所有であるとの聞き取りをいたしました。
依頼人は他人所有であることを知った上で管理をしていましたので、当初は時効になることは考えられないという判断をしていました。
その後、親族がその土地を依頼人に譲っても良いというお話をいただき利用状況を確認しに現地へ行ったところ、依頼人が認識していた親族所有の土地と書類及び現況から判断された土地の形状が違うことが判明し、土地の一部に時効が成立することがわかりました。
これにより、親族から依頼人への土地の譲渡手続きが容易に行えるようになりました。
- Q.
- 遺言書を作るには?
- A.
-
遺言書にはいくつか種類がありますが、多くの方は公正証書遺言か自筆証書遺言のどちらかを選ばれます。
以下にその特徴を記します。「公正証書遺言」
公正証書遺言は公証人がその作成に関与し、原本を公証役場に保管するため紛失や改ざんの心配もなく、信頼性が高いというメリットがあります。
また遺言者が亡くなったあとはそのまま各種手続きに使えるため、遺言者の希望をより早く実現することが可能となります。
ただし作成の際に2名の証人と費用が必要となることがデメリットと言われています。
しかし、証人は私どもで手配をすることも可能ですし、万が一自筆証書遺言で作成しその真贋が争われるようなことになれば、それにかかる時間や費用を考えると公正証書で作成するメリットの大きさがお分かりいただけると思います。「自筆証書遺言」
自筆証書遺言は法律に従って自筆にて書く遺言書です。
内容の訂正や日付の書き方など細かな点で法律に従った書き方がなされていない場合は無効になる可能性があります。
しかし、ポイントを押さえれば、すぐに書くことが出来ます。
その反面、自筆証書遺言はせっかく書いても、遺言者の死後にその存在自体を知られずに遺産分割協議がされてしまう可能性や、相続人の一部から遺言書の無効を争われる可能性もあります。
また、遺言者の死後は家庭裁判所で検認の手続きが必要となります。
検認の手続きは、日時を指定し家庭裁判所で相続人を集めて行われるため、遺言書に従って財産を分けるまでには多少の時間がかかります。
なお、検認手続は遺言書が本物であるという事を裁判所が確認するのではなく、遺言書の存在を確認するものです。
このため、検認後に遺言書が本物であるかどうかが争われる可能性は残ります。当事務所では、原則的に公正証書遺言の原案作成と遺言執行者としてのお手伝いをさせていただいております。
遺言執行者については下記「遺言執行者の指定を忘れずに!」をご覧ください。
公正証書遺言の作成に関する詳しい内容は、直接お問い合わせください。 - Q.
- 遺言書を作る際の注意点は?
- A.
-
遺言書を作成する際の注意点はいくつかありますが、その中から当事務所でご案内している4つをご説明いたします。
その1 補充遺言を書きましょう!
補充遺言とは、遺言書の中で財産を与えると指名された方が、不幸にも遺言者より先にお亡くなりになった場合を想定し、遺言書の中に第二順位以降の者を指定することです。
「もし先に亡くなったらその時に考えれば良い」とお考えの方もいらっしゃいますが、"その時"に遺言者に再度遺言が出来る能力が無ければ意味がありません。
たとえば認知症ですでに遺言が書けない状況にあるかもしれないのです。その2 ご夫婦そろって遺言書の作成を!
ご夫婦お揃いの場合は同じ時期に一緒に遺言書を作成されることをお勧めします。
なお「一緒に」というのは「一通の遺言書で」という意味ではありません。
これは遺言書の無効原因になりますので注意してください。「不動産がご主人の名義になっているから」「費用もかかるから」と、とりあえずご主人様の遺言書だけを作成して「奥さまに相続させる」という遺言をされる場合がありますが、これはお勧めできません。
ご主人がお亡くなりになったときに、奥様がご健康で、遺言が出来る状態にあるとは限らないからです。
認知症になっていたり、同一の事故等により直後に亡くなられた場合、一旦奥様が相続されたお二人の財産は奥さまの遺言書がない状態で、法律に従って相続人に分配されるからです。また公正証書遺言を作成する場合、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)、評価証明書(市区町村が作成した不動産の評価額が記載された証明書)、戸籍謄本などの資料が必要になります。
奥さまの遺言書を別途作成される場合は、再度同じだけの取得の手間と費用がかかりますが、一緒に遺言をしてしまえば、事前準備の手間が省けます。
また、将来取得するであろう財産(ご主人が遺言書で奥さまに相続させるとした財産など)を含めて奥さまの遺言をしておけば、とりあえず安心です。その3 遺言執行者の指定を忘れずに!
- 【遺言執行者】とは
- 遺言書の内容を実現するために、相続人に代わって財産の管理や分配を行う人です。
「相続人に代わって」と書きましたが、遺言の内容を実現することが目的ですので、相続人にとって利益となることだけを行うわけではありません。 遺言書の内容を実現するためには、不動産の売却や預貯金の解約、株式などの有価証券の名義変更など、専門知識が必要となる場合も多く、またこれらは平日にしか手続きができないものも多くあり、仕事をしながらや、被相続人(お亡くなりになった方)とお住まいが離れている場合は負担も大きくなりがちです。
遺言書を作成の際、「誰に財産を与えるか」といったことだけに目を向けがちです。
しかし、「誰に何を」と同じように重要なのが遺言執行者の指定だと考えます。
確かに、誰がその財産を取得するかを指定しなければ、遺言書を作成する意味はありません。(*なぜなら、遺言書を作成しなくても法律(民法)に定められた割合で相続人には亡くなった方の財産が分けられるからです。)
遺言はその書いた方の想いを大切にし、死後、その内容を実現することに意味があると言えるからです。
遺言執行者を指定することは、その実現にむけて積極的に財産の分配を進めてくれる人を指定することです。
遺言執行者を選ばなかったために遺言内容の実現が遅れたり、相続人が遺言とは異なった内容で財産を処分してしまう事も考えられます。
しかし、遺言執行者が選ばれている場合は、相続人には財産を自由にする権限がありません。
実は、遺言執行者を選ぶことは大切な事なのです。
しかし、士業の先生が作られた遺言書の中にも、残念ながら遺言執行者を指定していないものや、配偶者を遺言執行者にしているものが見受けられます。
配偶者を執行者にすることが必ずしも悪いとは言えませんが、いざ遺言を執行するとき(お亡くなりになったとき)、配偶者が既に亡くなっている可能性や、高齢で手続きをすることができない場合も考えられます。
遺言執行者にお子様などのご親族を指定されることも選択肢の一つですが、当事務所では司法書士が遺言執行者として、大切な財産の分配のお手伝いをさせていただいております。その4 遺留分を考えた遺言が相続人のためになります!
遺言書を作成しようとお考えの方は「自分の財産だから自分が考える通りにしたい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、当事務所では遺留分を考慮した遺言書の作成をご提案しています。
遺留分とは兄弟姉妹以外の相続人が主張することによって亡くなった方の財産の中から最低限度もらえる"取り分"です。
遺言があっても主張すれば相続人は遺留分をもらう事が出来るのです。
遺留分を主張する者がいるという事は偏った配分の遺言がなされているということ。
遺留分を主張する者も主張される者も気分はあまり良くないでしょう。せっかく争いにならないように書いたつもりの遺言書も新たな争いのタネになっては意味がありません。 - Q.
- 遺言書は一度作ればいいの?
- A.
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遺言書を作成し、安心していらっしゃる方が多いとは思いますが、遺言内容は定期的に見直すことをお勧めします。
お子様が結婚された、相続により新たに財産を取得された、引っ越しによって遺言書に記載された財産が変わった、財産を別の人に譲りたい・・・など、長い人生のなかで親族関係や財産に変化があった場合、せっかく作成された遺言書が万が一の時に役に立たない場合があります。
当事務所ではお手元にある遺言書の内容を確認し、必要であれば内容の変更や新たな遺言書の作成をお手伝いさせていただきます。 - Q.
- 完璧な遺言書はない!?
- A.
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ここまでご覧いただきありがとうございました。
せっかく遺言書に興味を持っていただいたにも関わらず水を差すようなことを申し上げますが、
”遺言書には完璧なものはありません”。
これは誰に作成を依頼しても同じです。それは、たとえ周到な準備をして遺言書を作成しても、いつ、誰が、どのような順序でお亡くなりになるか、それは誰にもわからないからです。
もちろん専門家に依頼すれば、遺言者のニーズにお応えできるように、補充遺言などの案を考えさせていただきます。
しかし、万々が一、ご家族が事故で一緒に亡くなられた場合など、予期せぬ方が相続される可能性はゼロではありません。多くの場合、財産はその遺言者の意思に従って相続されていることと思いますが、完璧なものはないことをご理解のうえご相談にお越しください。
当事務所では、不動産や法律・税務等に関係する専門家とネットワークを組んでおります。
司法書士事務所だけでは対応できない不動産を利用した資産活用のご提案など、コンサルティングから実際の手続きまでを一貫して対応いたします。