土地探しから建物完成まで、こだわりの家づくりは注文住宅ならではの醍醐味といえるでしょう。
そんな家づくりを少し違った目線から見てみましょう。
土地を探す場合、周辺環境や広さ等を参考に選ばれると思います。しかし、その土地の歴史を調べられる方はそう多くは無いと思います。東日本大震災では海から離れた所でも土地の液状化現象が起きたように、土地の歴史を調べることは家を建てる前の対策にも影響してきますのでぜひ参考にしてみてください。
役所などでは時間をかければ土地周辺の歴史(かつて沼地だった等)を調べることも出来ますが、購入予定地の成り立ちは法務局で登記事項証明書(登記簿)を取ることにより調べることが出来ます。
登記事項証明書には土地の所在や地目が書いてあります。
所在に「水」や「池、流」などのさんずいのつく地名などは軟弱地盤の可能性もありますので注意が必要かもしれません。(これ以外にも水辺を連想させる言葉はいくつかありますので、興味があれば調べてみてください。)たとえば、住所では「○○市大字○○1番地」という場所でも、登記簿をみると大字以降の小字と呼ばれる地名まで出ている所もあります。「○○市大字○○字○○」といった感じです。この「字○○」の部分はより狭い範囲の地名ですので過去の地形を特定するのに役立つ場合もあります。
また、地目の欄には現在「宅地」などと書かれていても、かつては「田」「池沼」などだった場合にはその記載がありますので、確認してみてください。
なお、現在の登記事項証明書はコンピューターの導入により、過去の所在や地目が載っていない場合があります。さらに古い記録を探すには「コンピューター化による閉鎖登記簿」と呼ばれるバインダー式の簿冊が法務局にありますので、そちらを確認してみてください。
ただし、土地は切ったり(分筆)、くっつけたり(合筆)する際に地番が変わったり、再開発などで元の場所と違う場所に地番が付けられたりすることがあります。そのような場合は調査も難しくなりますので専門家に依頼されることをお薦めします。
地盤に関しては最近では土地の売り出し前に地盤調査を行ったり、建物を建てる前に地盤改良工事などをすることにより、安心して家を建てられるようになっています。「この土地は大丈夫かな?」と思ったら不動産屋さんを通じて積極的に質問をしてみてください。
親族名義の土地を利用する場合でも、上記「土地の購入」で書いた土地の歴史を知ることは必要な事ですが、親族名義の土地ならではの注意点もありますので我々司法書士の職務に関係する部分を中心にいくつか挙げてみます。
- 土地の地番を確認しましょう
土地には1つずつ(土地1つを1筆といいます)に地番という番号があります。この地番は住所と同じ番号の場合もあれば違う場合もあります。住所は市区町村が便宜的に付けているもので、数軒の家が同じ住所といった事もあります。しかし地番は土地1筆に一つの番号が付くため、原則として重複することはありません。
また、土地は様々な理由で切り分けたりくっつけたりするため、いつも見ているその土地が1筆であるかどうかは調査しない事にはわかりません。これを調査するには法務局へ行って所在地の「公図」と呼ばれる地図を取得し、家を建てる土地の地番を特定する必要があります。家の建つ部分だけではなく公道に出るための私道部分や庭の部分についても地番の確認をし、家を建てるのに何筆の土地が関係してくるのかを確認しましょう。
- 登記事項証明書(登記簿)の名義は誰の名前ですか
地番が確認出来たら登記事項証明書を取得してみます。一般的には権利部(甲区)という欄の一番下に書かれている名前の方が所有者になります。ただし、何人かの共有になっていたり、所有者以外の事項が書かれていたりする場合もありますので注意してください。すべての地番で所有者の確認が必要ですが、その“所有者”は存命の方の名前が書かれていますか?もし、亡くなった方の名前のままである場合は相続登記の手続きが必要です。戸籍の取得や遺産分割協議書の準備などが必要になりますので、司法書士にご相談ください。
次に、所有者が生きていらっしゃっても安心してはいけません。その方はお元気ですか?もう少し詳しく言うと「正常な判断能力があるか」ということです。住宅ローンを借りて家を建てる場合、土地所有者は「担保提供者」として、銀行との契約書に実印を押さなければなりません。「ローンが払えなくなったら土地を売られてしまう」ということを理解したうえで実印を押す必要があるからです。もし所有者の方が認知症などで判断能力に問題がある場合は家庭裁判所を通じて“成年後見制度”を利用することになりますが、このような場合は家を建てるのは難しいかもしれません。司法書士等の専門家に相談することをお薦めします。
所有者の確認が出来たら登記事項証明書の権利部(乙区)も見ておきましょう。※一度も抵当権などの権利が付いたことが無い場合は乙区欄はありません。
ここには土地を担保としてお金を借りていた記録などが記載されています。「抵当権設定」などと書かれている場合もありますが、下線が引かれていれば消えていることを意味しますので問題ありません。もし消えていない事項がある場合は注意が必要です。これは、何年も前に返済が終わったのに抵当権の抹消をしていないか、現在も借入れがある場合です。現在も借入れがある場合はもちろん、返済が終わっていても抵当権が消えていない場合でも銀行は新たにお金を貸すことに慎重になりますので、出来る限りローン申し込みまでに抵当権等を消すための努力をする必要があります。
まれに、大正時代や昭和初期に設定した抵当権が残っている場合があり、抵当権者というところにまったく知らない個人の名前が書いてある場合などは、その抵当権を消すために何カ月もかかる場合がありますので早めに司法書士にご相談ください。 - 境界、接道、地目、用途、インフラの引き込み等々…
土地の権利の事以外にも隣地との境界線の画定、家を建てる土地は法律に従って道路と接しているか、家が建てられる地目・用途地域であるか、上下水道のインフラの問題などクリアしなければならない点がいくつもあります。これらは土地家屋調査士や不動産業者等の専門域になります。家のプランは決まっていても実際に建てることが出来るかは別の問題ですので、早めに専門家にご相談ください。
以上のような事項の調査は家を建てるハウスメーカーや工務店において調べる項目もありますが、成年後見の問題など気づかぬうちに家を建ててしまい、後から大変な思いをするといった事もあるようです。
また、相続や境界線の確定などの問題は親族や近隣住民との調整が必要であり、時間がかかりますので早めに司法書士等の専門家にご相談されることをお薦めします。
当事務所では、司法書士だけでは対応できない事案でも、提携する不動産コンサルタントや土地家屋調査士、税理士などと連携して対応させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
住宅ローンについてはQ&A形式で別にページを設けていますので こちら をご覧ください。
司法書士って何をする人??
よく、そんな質問をいただきます。
司法書士は国家資格であり、司法書士法によってその業務範囲が定められています。
たとえば、会社の登記、供託手続き、成年後見業務、裁判関係の書類作成や簡易裁判所における代理人などなど。
しかし数ある業務の中でもやはり不動産の登記が司法書士のメイン業務だと思います。
もちろん、当事務所も不動産の売買における登記や相続登記等が業務の中心です。
司法書士の業務は一般の方にはなじみのないことですし、恥ずかしながら私自身も勉強を始めるまで業務内容はおろか司法書士という資格すら知らなかったといっても過言ではありません。
では不動産の登記とはなんでしょうか。
家づくりをする際、間取りや住みやすさ、デザインも大切ですが、"その土地と建物が本当にあなたの名義であるか"ということはそこで平穏に生活するうえでの前提ではないでしょうか。
土地に看板を立てても、家に表札を出しても、あなたの権利が守られるわけではありません。
法務局に備えられた登記簿(記録)に名前を登記する(記載する)ことで、あなたは土地と建物の権利を守ることが出来るのです。
この手続きが"不動産登記の仕事"でありこのお手伝いをするのが司法書士です。
家を建てることを考えると地味な仕事ではありますが、私どもは大変重要な仕事をさせていただいている、という事を肝に銘じて日々の業務を行っています。
最後は、不動産を手に入れたら是非やっていただきたいことです。
それはずばり「遺言書を書いてください」。
せっかく家を建てたのに何を言うんだ、縁起でもない。
と怒られそうですが、司法書士としてはぜひ若い方にこれを実行していただきたいのです。
遺言書を書く年齢と言えば60歳代またはそれ以上の方(または資産をお持ちの方)を想像されることが多いでしょうが、ここでいう「若い」とは、おおよそそれ以下の年齢の方の事です。
もう少し正確に言いますと、
①お子さんがいらっしゃらない方
②一番下のお子さんが20歳になっていない方
のいずれかにあてはまる方です。
いったいなぜでしょうか。
その理由は民法の規定と我が国における相続財産に占める不動産の割合が高いことの二つです。
万が一、不慮の事故等で亡くなられた場合、一般的には民法の規定では上記①の場合の相続人は配偶者と親(亡くなっている場合は兄弟)であり、上記②の場合の相続人は配偶者と子供になります。
このとき、遺言書が無い場合は原則として相続人全員で遺産分割協議をすることになります。では、具体的に①②の場合はどのような問題が生じる可能性があるのでしょうか。
①においては、残された配偶者の義理の親や義理の兄弟が不動産の権利を放棄してくれれば問題ありませんが、それがかなわなかった場合、せっかく建てた家が相続人の共有になってしまったり、最悪の場合、売却して現金を分割することになります。
②の場合では20歳になっていない子供は遺産分割協議に参加できないため、子供の代わりとなる特別代理人(司法書士等の専門家や祖父母など)を選んで裁判所の許可を得て遺産分割協議をすることになります。
配偶者が相続人の一人である以上、子供の代理人にはなれないのです。
一般の方でここまで考えていらっしゃる方は稀かと思いますが、せっかくこのページを読んでいただいたので、実践していただければ幸いです。
もちろん、不慮の事故で配偶者も含めて亡くなられる可能性もあるわけですから、遺言書があれば絶対に大丈夫とは言い切れませんが、無いよりは安心だと思います。
なお、当事務所では遺言書作成のお手伝いもしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
また 相続・遺言のページ には遺言書作成の手続きやQ&A形式で情報を提供しておりますのでご一読ください。